『変身ベルト』は玩具界のAKB48 !?
連載グラビア「ビジョメガネ」、玩具、ガンダムという、デジタルグッズ誌の中で最もアナログに近いページを担当している益子です。
間もなくクリスマス。
玩具市場にとっては、1年で最大の売上を出す大事な大事な商戦期。
新聞にも玩具店のチラシが折り込まれたりと、賑わい増しています。
男児向け、女児向け、知育、創作系、ゲームなどなど。
子供の性別と年齢と嗜好、親の思惑など、さまざまな需要に合わせて多ジャンル多品種の製品が供給される群雄割拠な商戦期の中で、ここ3年ほど、突出した売上を記録する製品があります。
それが、仮面ライダーの変身ベルト。
毎年新シリーズが放映されていますが、今年は仮面ライダーフォーゼの『変身ベルト DXフォーゼドライバー』。
上のリンクをクリックしてもおわかりの通り、ほとんどが品切れ状態。
在庫があっても定価以上になっていたり……。
玩具業界におけるクリスマス商戦時期での欠品は、需給目測を誤った企業として恥ずべきこと、なんて言われたりもします。
ですが、この変身ベルトは、3年連続で品薄状態。
業界最大手であるバンダイが前年の経験を踏まえて緻密な生産計画を立てているにも関わらず、です。
それぐらいに、年を重ねるごとにヒットが大きくなっています。
2009年 仮面ライダーW『変身ベルト DXダブルドライバー』
→54万個販売
2010年 仮面ライダーオーズ『変身ベルト DXオーズドライバー』
→75万個販売(オーメダルは累計3000万個以上)
2011年 仮面ライダーフォーゼ『変身ベルト DXダブルドライバー』
→販売個数未発表(前年のペース上回る模様)
※『W』のキャラクター商品総売上は約230億円、
『クウガ』~『ディケイド』までの平均は約106.3億円。
変身ベルト玩具は昭和仮面ライダーの頃からありましたが、品薄による店頭での争奪戦や、日経トレンディ誌「2011年ヒット商品ベスト30」の第10位に番付入りするという、ちょっとした社会現象的ヒットになっていったのは、ごく最近のこと。
その第一歩は、2009年の『W』からでした。
『W』から、変身するにはベルト本体に“アイテムを複数個を組み合わせる”という設定に。
『W』はUSBメモリ型アイテムを2種。
『オーズ』はコイン型アイテムを3種。
『フォーゼ』はスイッチ型アイテムを4種。
この“複数個”によって変身形態のバリエーション、組み合わせの楽しさ、アイテムを集めるコレクション性が格段と増え、子供心を大いにくすぐりました(購入する親はアイテムが増えて泣いてますが)。
そして、隠れがちなもう一つのヒット要因は、新シリーズの放送開始時期が、1月から9月に変わったこと。
『W』以前までの「平成仮面ライダー」は1月または2月の放送スタートでした。
そもそも「平成仮面ライダー」は2000年の『クウガ』以降、東映&バンダイによるもう一つの看板「戦隊ヒーローシリーズ」と同じ新春からの放送スタートでした。
改変した当初は、制作進行および広報などの点からスタート時期の分散を計ったと捉えていたのですが、放送スタートがずれた仮面ライダーのほうにこれほど大きな恩恵が訪れるとは。
9月に新シリーズの放送がスタートし、キャラクターと設定が定着、物語が加速し始めたころにクリスマスが来る。
変身ギミックの魅力もさることながら、子供の物欲を最も刺激するロードマップとシリーズの進行が見事にマッチしていった訳です。
この不景気の中での爆発的単独ヒット、積み重ねてきた長い期間を経てのヒット、購入することで加速する物語への没入感。
これらの要素がなんだか「AKB48」のヒットと被るのです。
ちょっと強引ですかね(笑)。
子供に「いい子にするからサンタさんに変身ベルトを頼んで」と言われ、その頑張りに免じて購入しようとしたら売り切れ……。
手に入らないと子供のトラウマにもなりかねないので、泣く泣くオークションサイトにて高値で購入してしまうというエピソードが、大ヒット育児マンガ『ママはテンパリスト』にもありました。
今もし、店頭もしくはショッピングサイトでの入荷タイミングに当たったら「即買い」ですよ、お父さん! お母さん!