音楽の楽しみを変えるヘッドホン、『mico』

みなさんこんにちは。オーディオ、電子楽器など音モノ担当の玉造です。
前回のブログでは謎のペン立て(…と言い切っていきますよ!)を紹介しましたが、4月25日発売の6月号ではああいう(?)いつもは紹介しないような製品がたくさん出てくる予感!
ということで、今回は同じく6月号で紹介する、今までにないオーディオ製品をひとつ。

ニューロウェア『mico』
装着している人の脳波を検知して、自分のその時の気分に合わせた選曲をしてくれるヘッドホンです。
脳波はおでこ部分にセンサーを当てて検知します。
そもそもニューロウェアって何? という人もいると思いますので、まずはニューロウェアについて説明します。
ニューロウェア公式サイト(http://neurowear.com/)によると
“ニューロウェア”は東京を中心に活動する「ちょっと未来のコミュニケーション」を創造するプロジェクト・チームです。脳波や心拍など生体信号を用いたプロダクト/サービスのデザイン。プロトタイピング、デモンストレーションを行なっています。
……というように、メーカーではなくプロジェクト・チームなんですね。
今回取材をさせて頂いてお話を聞いたのですが、「コミュニケーション」というテーマを基にいろいろな実験的かつ面白い試みをしています。
その中には製品化している製品もあります。

ニューロウェア『necomimi』
実勢価格:7580円(Amazon価格)
リラックスしていたら耳が垂れたりするなど、脳波の状態を感知して動く猫耳です。
一時期いろいろなニュースサイトやテレビで話題になりましたが、この『necomimi』も新たな「コミュニケーション」のツールになり得る製品ですね。
他に開発されているツールだと、個人的にはこの製品が面白いと思いました。

ニューロウェア『ZEN TUNES』
音楽を聴く時の「無意識」な脳波情報を検出して、そのユーザーに対して潜在的に「リラックスに向いている」、「集中に向いている」曲を選びプレイリスト化してくれるiPhone向けアプリケーションです。ユーザーが選曲に対してどのような反応をしたかでプレイリストが生成されるので、自分でも思いがけない選曲をごくパーソナルなレベルでチャート化してくれるのです。
さて、話を『mico』に戻すと、『mico』は『ZEN TUNES』に偶発性を加えたようなモノになっています。誤解なきよう加えると、選曲から自分の脳波状態を知れるというモノではなく、もっと音楽との出会いに着目したコンセプトであるということ。
実は玉造もそこに関しては誤解していた部分で、実際に取材時に試してみてわかりました。

お話を聞かせてくれたのは、『mico』を企画したプランナーの土屋さん。

対応楽曲データベースが入った「iPhone」と『mico』を接続。アプリを通して選曲します。

候補楽曲がキャプチャー上に現われて、選ばれる間にふわふわとモーションしていく。
土屋さんによると、『mico』は「music inspiration from your consciousness」の略称ですが、この選曲されるモーションが、まるで“ご神託を受ける巫女”のようだという由来もあるのだとか。

選曲された後は、その曲を聴きながら脳波状態を3つの表示で表わします(画像の人物シルエット上)。
ここで検知されてる脳波は前述の通り、「無意識」のものであるため予想外な反応を見せることがあります。そこがこの製品の肝で、自分で気付かない潜在的な反応がわかるからこそ、ある種の気付きに繋がるのです。
例えば、玉造が試した三回は以下のような楽曲が挙がりました。

マイナー・スイング/ベラルーチェ

1/1/ブライアン・イーノ

アンド・アイ・ラブ・ユー・ソー/ペリー・コモ
見事にジャズやアンビエントなどミドルテンポで展開されるまったりした曲ばかりがセレクトされました。取材時なのでまったりした気分のはずはないと思いたいし……、実際に意識的な部分ではそんなことはなかったのでこの選曲はちょっとした驚きでした。
他に表現が無いので気分という言葉で包括されていますが、実際は予め脳波データをタグ付けされた楽曲と自分の脳波のマッチングをもとに選曲しているので、一概に「落ち込んでいるからこの曲」のような言語化しやすい選曲にはならないんですよね。
これがいわゆる『mico』が「音楽との出会いに着目している」といった部分。
土屋さんによると「例えば、メタルという言葉は知らないけど、あの速くて重くて激しい音楽が好きな人がメタルと出会える、最終的にそうありたいデバイス」であると。
音楽を好きな人って、とにかくアーカイブを聴きまくっていろいろな知識を蓄えて自分の中で体系化していく。でも普通の人はそうでもない。だから後者の人は自分の好みの音楽になかなか気付けない。
でも『mico』が目指している部分は、自分の無意識下でマッチした楽曲をフックアップしてくれるから、今まで知らなかったけど自分にマッチする、そんな音楽と出会える。
ごく個人的な意見を言うと、『mico』は自分が思い描いた「理想のシャッフル機能」にとても近いんですよね。
音楽プレイヤーでシャッフル機能を使う時、いつも僕は「この流れだったら次あの曲流してくれたら最高なのに……」とか妄想しています。
自分で聴きたい曲に変えろよって? いや違う、そうじゃない! その曲を聴きたいんじゃなくて、選曲の偶然性を楽しみたいんです。さらに言えば、自分が思いもつかなかった流れをシャッフル機能に提供してほしい。
たぶん僕が「iPod Classic」で自分のデータ音源全てを常に持ち歩いているから、そう考えることだとは思いますが。
『mico』にはその理想の楽しみを実現する可能性がある。実際に聴いて楽しんでみてそう感じましたね。
近い将来、この『mico』を応用した「iPod」や「ウォークマン」が発売されたら、音楽の世界観はまた一つ変わりそうな気がする。そんな将来を玉造は待ち望んでいます。
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